個人輸入の規制は手段であり本当の目的は海外事業者による日本への模倣品の輸出

商標
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個人輸入を禁止する商標法の改正が本決まりになりそうである。

産業立法である商標法において、個人輸入は商業輸入と区別されているから、個人輸入行為自体は本来であれば商標法の射程には入らないはず。

個人輸入を規制するより、最近の越境ECの普及によって、個人輸入を逃げ道とする海外事業者が増えていることを規制すれば良いのだが、属地主義が支配する商標法を根拠に海外事業者の販売行為を規制することはできない。

海外事業者の日本への輸入行為を規制できないから、便法として日本における「個人輸入」を規制の対象にするしか方法がないというのが今回予定されている商標法改正。

つまり今回の個人輸入を狙った商標法改正の本当の目的は、海外事業者が日本へ模倣品を輸出する行為であり、個人輸入の規制は、その目的を達成するための手段という位置づけなのである。

純粋な個人輸入を規制することは商標法の趣旨に照らしても無理があるにも関わらず、個人輸入を無理やりに規制しようとするから、取り締まり現場の税関もかなり苦労するはずである。

まだ改正法が発表されていないので推測の限りだが、おそらく間接侵害規定を変えることになるだろう。

「〜その商標が商標権者の許諾を受けて付されたものでないことを知りながら輸入する行為」が商標権の侵害とみなす行為として追加されると思う。

この「〜知りながら〜」は、著作権法にも規定された経緯があるので、著作権法を見倣った形で特別に新しい立法方法ではない。

ところで本丸を規制できないからそれを幇助する行為を規制するという立法技術をどこかで見たことがないだろうか。

著作権法を思い出して欲しい。

支分権の束と呼ばれる著作権法は、複製権や公衆送信権を始め非常に多くの権利を規定して複雑怪奇極まりない装いと化している。

著作権法で規制している複製権などの権利は、他人が勝手に複製することを禁止する権利なのだが、著作権法が本来実現したかったことは、他人の無許諾の複製を禁止するということではない。

本当の目的は、無許諾にコンテンツを見たり聞いたり読んだりすることを禁止したかったのである。

ところがこのような行為を直接的に規制しても執行できないために、見る聞く読むに付随して行われる複製するという行為を規制せざるを得なかったのである。

見る聞く読むに付随する行為は、複製だけではないから、見る聞く読むに付随するようなすべての行為を規制した結果、複雑怪奇は装いと化したというのが今の著作権法である。

著作権自体はコンテンツプロテクトの発達により何れ最終目的であるコンテンツの無断アクセスを禁止することが可能なので、支分権を充実させた今の法体系はいずれ崩れるのかもしれない。

商標法は、日本の法律の域外適用が可能にあれば、個人輸入を規制するという無理なことをしなくても済むようになる。

この記事を書いた人
TANAKA Tomio

2004年弁理士登録
電機・電子・IT分野を得意とし国内・国外の権利化について豊富な経験と実績あり。
中国上海駐在経験を活かし中国実務についても豊富な経験あり。
知的財産調査官として特許を始め意匠・商標・著作権・不正競争防止に係る模倣品の輸入差止め審査に従事した経験を活かし模倣品対策についても積極的に取り組む。

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