外国特許が必要なのは大企業だけ、は過去のはなし

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この仕事を始めたころ、外国出願にはステータス的な意味合いがあり、外国出願を担当している、というだけで、凄いという目で見られたものだった。

1990年代、外国出願をしている企業と言えば日本を代表する名だたる企業ばかりで、出願先も欧米(当時はEUはないので英独仏)がほとんどという時代だった。

流れが変わったのは、中国がWTOに加盟してからだろう。

このあたりから、製造拠点を中国に移し、中国から日本を初めとする消費国に輸出するというビジネスモデルが始まった。

特許権を行使するとは、すなわち製造をやめさせる、販売をやめさせる、ことなので、製造地と消費地が異なる国にあるなら、それぞれの国で特許を取得しなければならない。

はじめのうちこそ、製造拠点を海外に移すことができるのは大企業に限られていたが、次第に中小のサプライチェーンも海外に製造拠点を移すようになってきた。

中国の話ではあるが、2012年をピークに在留邦人数が減り続けている。

政治的な理由や、人件費の上昇によりチャイナプラスワンと称して、製造拠点を周辺国に移転させる動きが始まったのがこの頃。

知財の視点でみると、製造地だった中国が消費地も兼ねるようになり、海外特許は中国だけで良いという考えもあったが、製造地が中国から他国に移ると、再び特許出願のポートフォリオを考えなければならなくなった。

製造地と消費地が分散している場合、どの国で特許を取得すれば良いかという質問を頂く。

上流を抑えるのが原則だが、製造国は往々にして権利行使を満足に実行することができない。

中国もかつては特許を取得したはいいが権利行使はできないと言われていたが、いまの中国は権利行使ができる国に昇華している。

ベトナムなどの製造国で特許権を取得するよりも消費地である中国で取得して於けば足りる場合もある。

もちろん資金に余裕があれば、原則に従って製造国でも特許権を取得する。

さて特許を取得する国は製造地と消費地だけではない。

製造地から消費地に製品が直接流通することは少なく、現在は特定の経由地を通過する。

典型的な経由地がUAE。

中国からUAEを経由して欧州へ製品が流通するのだが、経由地の税関で輸出差止めをしたいと考えるなら、経由地で特許権を取得することも必要になる。

世界特許という制度があれば良いが権利は各国で取得して行使するという現在の制度では、日本だけで特許権を取得すれば足りるというわけではない。

外国特許というと何やら物凄く大変に聞こえるが、現地情報も簡単に入手できるし、現地代理人とのコミュニケーションも簡単になり、何より代理人手数料が安くなっているので、積極的に外国出願をして欲しい。

場合によっては国内の権利は取得せず外国のみで特許権を取得するという戦術でもよい。

この記事を書いた人
TANAKA Tomio

2004年弁理士登録
電機・電子・IT分野を得意とし国内・国外の権利化について豊富な経験と実績あり。
中国上海駐在経験を活かし中国実務についても豊富な経験あり。
知的財産調査官として特許を始め意匠・商標・著作権・不正競争防止に係る模倣品の輸入差止め審査に従事した経験を活かし模倣品対策についても積極的に取り組む。

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