秘密特許制度が復活しても情報は簡単に公開される

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日本語という言語の壁があって特許出願した内容が1年半後に公開されても英語文献のようなデメリットはない、ということを言う学者もいたが、ここ数年のGoogle翻訳の精度向上により、日本語の壁という恩恵を受けることは過去の話になってきた。

さらに数年前に特許庁が日本語で公開された特許文献を翻訳するという行政サービスを初めたときは正直耳を疑った。

外国企業が日本の特許情報にアクセスしたければ、自ら翻訳すれば足りるのに、何も行政が外国企業のために技術情報を無料提供する必要などないと思うのだが。

ようやく最近になって出願公開制度を見直すという話がでてきているが、秘密特許のように公開する技術を制限しても、いまの時代、技術情報など簡単に海外に流出してしまう。

例えば安全保障貿易管理で定められている特定技術の輸出制限は、貨物のように通関を必要とする有体物ならそれなりに効果はあるが、情報という無体物は通関なしでネット経由で簡単に海外に流出してしまう。

その最たるものがWeChatのようなアプリ。

スマフォで撮影した画像情報が簡単に海外に輸出されてしまう時代に、秘密特許制度や安全保障貿易管理は全く歯が立たない。

日本の場合、個室が与えられて秘密情報を管理しやすい欧米の職場環境とは違い、大部屋で大勢が集まって秘密情報を共有する環境なので、研究所や知財部に籍を置いてさえいれば技術情報に簡単にアクセスできるし、安全保障貿易管理とて日本に居住していれば日本人・外国人を問わず技術情報を自由に取引できる。

チャイニーズウォールという情報隔離を採用する企業もあるが、体外的に情報管理を徹底しているという形式的なアナウンスが目的というのが実態だろう。

技術情報の海外流出を本当に制限したいならば、中国のように、金盾でネット遮断し、個人の通信ログを管理することまでしないと実効性はない。

さらにインターネット出願自体を廃止することもあり得る。

自分が事務所を立ち上げたときは出願件数が少なかったこともあり、インターネット出願をせずに、昔のように紙で特許庁に郵送出願していた。

インターネット出願自体のセキュリティに懐疑的なのは自分だけではないと思うが、もはやそんなことを理由に紙出願を続けていると変人扱いされてしまう。

情報の流出を制度で守ること自体が不可能に近い今の時代は、個別契約で情報漏洩をしないという言質をとっておく必要がある。

もっとも日本の場合、契約不履行による罰則も、不正競争防止法による罰則も大した抑止力にならないと言えばそれまでなのだが。

この記事を書いた人
TANAKA Tomio

2004年弁理士登録
電機・電子・IT分野を得意とし国内・国外の権利化について豊富な経験と実績あり。
中国上海駐在経験を活かし中国実務についても豊富な経験あり。
知的財産調査官として特許を始め意匠・商標・著作権・不正競争防止に係る模倣品の輸入差止め審査に従事した経験を活かし模倣品対策についても積極的に取り組む。

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