静岡弁理士 田中智雄の知財ノート | 田中特許事務所

仮想通貨・ブロックチェーンの特許ポートフォリオ

著作物の追及権をブロックチェーンを利用して実現する

特許第6391128号

ブロックチェーン技術を利用して追及権の担保を条件に美術の著作物の譲渡を実現する発明です。

 

美術著作物の取引に係る情報をブロックチェーンに登録しています。

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ブロックチェーンにコントラクトを設定しています。

譲受人が著作者に対価を支払うことを譲渡条件とするコントラクトを設定しています。

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コントラクトが成立するとブロックチェーンの所有者情報を更新しています。

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【発明の構成】

作成者情報、作品の取引規則を定める規則情報、作品の取引に用いられる仮想通貨に関する情報、作品の譲渡履歴を格納する複数のブロックを連結したブロックチェーンを取得、
作成者受取額が送金されることを条件として、譲渡人情報、譲受人情報を追加した新たな譲渡履歴をブロックチェーンに追加、
作品の所有権の譲渡履歴を追加したブロックチェーンをブロードキャスト、
作品の譲渡価格に取引規則に定められた割合を乗じた額である作成者受取額を譲受人に関連付けられた仮想通貨の残高から減じ、仮想通貨の残高に作成者受取額を加算する手順が定められた取引規則が実行された場合、新たな譲渡履歴をブロックチェーンに追加、

 

【note】

著作権の支分権である追及権をブロックチェーン技術を利用して実現する発明です。

日本では採用されていませんが、追及権は欧州を中心に広く採用されています。

 

美術の著作物はオークション等で転売されながら価値が上がっていきます。

追及権がないと、著作物の価値が上がって売買価格が上がっても著作者には何らの経済的な見返りがありません。

著作者は最初の販売によって経済的な利益を受けるだけで、その後の転売には何ら関与することができません。

追及権の採用によって、最初の販売だけでなく、転売されるごとに著作者に経済的な利益を還元しようとする権利です。

 

著作物の流通というとファーストセールドクトリンが思い浮かびますが、追及権は消尽を否定する権利です。

 

譲渡の条件に著作者への対価の還元を条件とするコントラクトをブロックチェーンに書き込んでおくこと、対価支払いを仮想通貨で行うこと、コントラクトの実行を条件にブロックチェーンの所有者情報を更新すること、が主な構成です。

残念ながら先行技術を理由にこのレベルでの特許化は認められておらず、対価の支払い先を著作者以外に設定するという構成を追加して特許化に至っています。

 

追及権に限らず著作物をブロックチェーン技術を利用して管理するというシステムが存在します。

登録公示制度を採用していない著作権は、他の知的財産権に比べて管理が難しく、ビジネスとの親和性が低いことが問題です。

無方式主義と相まって中央で管理されることなく日々発生する著作権は、ブロックチェーンで管理することで格段に利便性が上がります。

ブロックチェーンに登録した著作物の利用を監視し、許諾を得ないいわゆる違法コピーの特定もできます。

 

行政による著作権の登録制度があるものの、利用されていない理由は、手続きが面倒という理由の他にも、登録のメリットがないからです。

ブロックチェーンを利用すれば、スマートコントラクトの実現、仮想通貨によるコンテンツの利用の促進、二重譲渡の防止、違法コピーの発見など、著作権に係るトラブルのほとんどに対応できるメリットがあります。

 

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弁理士 田中智雄