静岡弁理士 田中智雄の知財ノート | 田中特許事務所

アイデア・デザイン・ブランドのこと

著作権侵害で喜んでいる権利者もいる

良い殺人と悪い殺人はありません。

殺人は全て悪い、

だから殺人をしたら被害者が親告しなくても罰せられます。

 

著作権はどうでしょうか。

良い著作権侵害と悪い著作権侵害。

殺人と同じように著作権侵害は全て悪なのか。

 

コンテンツを創った人を守るのが著作権です。

コンテンツを創っただけで満足する人はいません。

だれかに自分のコンテンツを見てもらいたい、

だれかに自分のコンテンツを聞いてもらい、

だれかに自分の存在を知ってもらいたい。

 

他人のコンテンツを無断で拡散する、

コンテンツをTwitterやYouTubeにアップする、

これは公衆送信権の侵害です。

 

公衆送信権を侵害して他人のコンテンツを拡散すること、

これが全てのクリエイターにとって悪いことなのかどうか。

 

ある無名のギターリストがいました。

毎日、路上で弾き語りをしています。

目の前に置いたギターケースの中には僅かな投げ銭があるだけ。

 

演奏を聴いていた一人が演奏を黙って撮影してYouTubeにアップしました。

 

公衆送信権の侵害です。

 

あるときYouTubeにアップされた演奏を見た会社の社長さん、

そのギターリストの演奏に感動し自社のCMに使うことを契約しました。

無名のギターリストは、そのCM出演をきっかけに一躍有名になりました。

 

この著作権侵害は悪いことだったのでしょうか。

 

あのときYouTubeに演奏がアップされなければ、

社長さんの関心を引くこともありません。

CM出演により有名になることもなかったでしょう。

 

無名のギターリストのコンテンツが無断で拡散されたから、

公衆送信権の侵害があったから、

無名のギターリストが一躍有名になることができました。

 

著作権が一躍脚光を浴びるようになり、

やって良いこと悪いことについて、

みんなが知るようになりました。

 

著作権ルールが浸透するのは良いことです。

でもそれによってチャンスもなくなりました。

 

無名のギターリストが一躍有名になる、

そんな夢みたいなことはもう起こらないでしょう。

 

著作権は私権です。

権利者が第三者の行為の良し悪しを判断するのです。

自分のコンテンツを無断で公衆送信した人に対して、

嫌だと思えばNOといい、

嫌だと思わなければそのまま、

たたそれだけのことです。

 

著作権侵害の評価は、

他人のコンテンツを拡散するという行為について、

権利者が嫌だと思えば著作権の侵害、

これが理想です。

 

現在の著作権ルールは、

公衆送信することを権利侵害とするルールです。

 

これは包丁は危ないから使ってはいけない、

クルマは危ないから使ってはいけない、

と同じです。

 

包丁を使えば素晴らしい料理を創ることができる、

クルマを使えば行きたいところに行ける、

結果の良し悪しは無視して、その前段階の包丁やクルマを使うことを禁止する、

これが今の著作権ルールです。

 

他人のコンテンツを拡散すれば良いコンテンツを簡単に紹介できる、

コンテンツを拡散したことの結果は無視し、

その前段階の拡散行為を禁止しています。

 

いまのルールでも権利者の許諾があれば合法に公衆送信できます。

でもそれでは無名のギターリストのような奇跡は起こらないのです。