ストックオプシンの代わりに仮想通貨でインセンティブを与える

特許第6463524号

仮想通貨の公開前に設定した条件で公開後の仮想通貨を取引してインセンティを与える発明です。

 

仮想通貨の発行計画を設定しています。

公開後に取得する仮想通貨の取引条件を設定しています。

ユーザから仮想通貨の購入希望を募ります。

取引条件が設定されているユーザに対して取引条件に基づいて仮想通貨の取引を成立させています。

 

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【発明の構成】

発行者が発行する未公開の仮想通貨に関する取引に関する取引条件が、取引者との間で設定されているか否かを判定する、
取引条件が設定されていた場合は、仮想通貨が公開された際に、取引条件に従って発行者が有する仮想通貨を取引者に提供するように通知して仮想通貨に関する取引を成立させる、

 

【note】

ストックオプシンの代わり仮想通貨でインセンティブを付与するという仕組みです。

ただ拒絶理由の内容をみると、権利行使株数、権利行使価格等の取引条件を、発行者と取引者との間で設定すること、ストックオプションが、公開されるよりも前に設定されること、ストックオプションに代えてICOトークンを利用すること、が公知であると指摘されているとおり、ストックオプションに代えて仮想通貨を採用することに特許性はありません。

 

補正によって、「仮想通貨が公開された際に、仮想通貨の取引を実現する取引サーバに対し、取引条件に従って発行者が有する仮想通貨を取引者に提供するように通知する」という構成を加えて特許になっているので、ストックオプシンの代わりに仮想通貨でインセンティブを与えるという思想に特許性が認められているわけではありません。

 

「通知」という構成が特許の成立に寄与しているのですが、正直、これで限定したことのメリットが理解できません。

 

意見書をみると、未公開の仮想通貨の取引条件を設定していることを公知技術との相違点として主張しているのですが、ストックオプシンの取引条件も公開前に設定しています。

 

さてストックオプションを仮想通貨に代えたことで何が変わるのかといえば税制です。

ストックオプションで得られた利益について優遇税制が用意されていますが、仮想通貨に対しては、将来的な課題です。

株式と同じような優遇措置が用意されるかもしれませんが、税制という人為的取り決めによって発明の経済的価値や商業的価値が異なってきます。

 

最後まで引っかかっていた、「未公開の仮想通貨の取引条件を設定する」、という構成は、仮想通貨に対する課税を意識しているのではないかと思っています。

明細書には一切記載がなく、税務会計の専門家でもないので、それが意図することは想像でしかありませんが、仮想通貨を公開時の価格より低い価格で譲渡すれば、税率が高い贈与税の適用が予想されます。

 

公開前の価格で課税させる方法があるとすれば、それは信託設定です。

金融的課題を技術で解決するフィンテック特許です。

 

田中特許事務所

弁理士 田中智雄