自称著作権者を信じられますか

著作権の譲渡や許諾の契約をするときは、自分が譲渡や許諾をする権原を持っていることを証明しなければなりません。

特許権や商標権であれば、特許庁に備え付けられている原簿を確認すれば権原の有無を確認することができます。

原簿への登録が義務付けられる特許権や商標権と違って著作権にはそのような原簿はありません。

 

そのような原簿がなくても著作権の権原の主張は可能です。

しかし契約相手側からすれば、この人が本当にこの著作物の著作権者なのかという不安が残ります。

 

そのような不安を払拭する方法の一つに著作権の登録制度を利用する方法があります。

著作権法第76条第1項に規定されている「第一発行年月日の登録、第一公表年月日の登録」です。

 

第一発行年月日の登録、第一公表年月日の登録の法律上の効果は、登録に係る年月日に最初の発行又は最初の公表があったものとの推定です(同条第2項)。

実務上の効果として、著作物の著作権者であることを間接的に証明することが期待できます。

 

第一発行年月日、第一公表年月日を登録すると、著作者の氏名及び著作物の題号が著作権登録原簿に登録されます。

著作権登録原簿に登録されている者がこの著作物の著作権者であることを公示している訳ですから、この原簿を提示することができれば著作権者であることの証明力を高めることができます。

 

本当に自分が著作権者なのか

著作権は商標権や特許権のように権利者が公示されません。

自称著作権者と主張する人が、真の著作権者かどうかは実は誰にも分からないのです。

 

例えば、

著作権を他人に譲渡したのに自分が著作権者であると主張する人、

他人が創作した著作物であるにも関わらず、その著作物の創作者または譲受人の所在が不明な孤児著作物であるため、自分が著作権者であると主張する人、

他人の著作物を真似して創作して著作権者を主張する人、

これらは著作権者の詐称です。

 

著作権者の詐称は悪質ですが、自分が創作したと思っていた著作物が、実は過去の記憶を再現した著作物に過ぎなかったという場合があります。

 

全く新しいパイオニア的発明が生まれないように、全く新しい創作物は生れません。

 

著作権をコピーライトと言うように、創作物は多かれ少なかれ必ず何かに依拠しています。

依拠の度合いが100%であれば模倣、依拠の度合いが少なければ二次的創作です。

 

過去に見たモノに依拠しているにも関わらず、本人がそのことを意識しなければ、他人の創作物に無意識に依拠して創作した人が著作権者ということになってしまいます。

 

東京五輪のロゴマークのときのように、著作権者であることの主張に対して真の著作権者の反論があれば、著作権者の真偽が明らかになります。

真の著作権者からの反論がなければ、著作権を主張する自称著作権者が著作権者になります。

 

しかし真の著作権者を主張する人も実は真の著作権者ではないのかもしれません。

真の著作権者は実は誰にも分からないのです。

 

自分が著作権者であることを保証させる契約

権利者を法的に証明できない不安定な著作権がビジネスに与えるリスクについては予め考慮しておく必要があります。

 

著作権の譲渡や許諾をする契約を交わすことが増えてきましたが、契約書には譲渡や許諾する権原を有していることを証明する権原保証条項を加えておくと良いでしょう。

 

著作権者が創作者である場合の権原保証は、他人の著作物に依拠することなく独自に創作したという内容になります。

 

東京五輪のロゴマークのときのように、後日になって似たような著作物の存在が明らかになったとしても、それが独自に創作した創作物であれば合法的に著作権が発生するからです。

 

著作権者が創作者ではなく、創作者から著作権を譲り受けた譲受人の場合の権原保証は、創作者が有していた著作権の移転の登録がされているという内容になります。

 

著作権の移転の登録は、特許権や商標権の移転の登録のようの効力発生要件ではありません。

したがって登録がなくても著作権の移転という法的効果は発生します。

しかしながら二重譲渡があった場合、著作権の移転の登録がない譲受人は第三者に対抗することができません。

 

著作権の移転の登録があれば、第三者に対抗するという法的効果を得ることができ(著作権法第77条)、二重譲渡があった場合でも譲渡や許諾をする権原があることを保証することができます。